脳脊髄液減少症について

※動画でも紹介しています。よろしければご覧ください。

私は〈脳脊髄液減少症〉という病気を患っています。

簡単に説明しますと…
頭蓋骨の中で脳は浮いています。浮かせているのは何かというと、髄液です。
そして髄液は、硬膜(こうまく)とよばれる硬い膜に覆われていて、外に漏れ出さないようになっています。

ところが、交通事故やスポーツ外傷で、硬膜に穴が開くケースがあります。
すると、本来は漏れないはずの髄液が漏れるようになります。

髄液が漏れると何が起こるかというと、脳が正常な位置から下の方に下がってきます。
それに伴って、頭痛やめまい、簡単に疲れてしまうなど、数々の症状が体に現れます。

〈脳脊髄液減少症〉は、こんな病気です。

下がってしまった髄液が頭部に戻れば症状は治まるので、横になって寝ていれば、通常の状態に戻ります。
下がってしまった髄液が「砂時計のように頭部に戻れば、なんともない」ということです。

しかしずっと寝ながら暮らしていくことは、現代では難しいですよね。
寝ていれば大丈夫だけど、寝てばかりではいられない…
それがこの病気の患者のジレンマです。

この病気は、2000年に「交通事故後のむち打ち症の症状で苦しむ人に、硬膜の穴を塞ぐ処置をすると改善する」という形で発見されました。
それからも長らく認知が進まず、「怠け病」とされてきました。

そして2016年に、硬膜の穴を塞ぐ処置、通称「ブラッドパッチ」が、やっと保険適用になりました。
それでも、保険適用になるのは一部の条件を満たした患者のみです。


現在でもまだ認知度が高いとは言えず、病名にたどり着くまでが、なかなか大変です。
病院で行う通常の検査では見つけることが困難で、症例を見たことがあるドクターも少ないためです。

かく言う私も、原因不明のめまいが始まってから、診断名までたどり着くのに、23年かかりました。
自力で立てないめまいが起きても、初診でかかったドクターは「原因がわからない」とお手上げ状態でした。


私のことで言えば、初めて今のようなめまいが起きたのは、11歳の時です。
大きな総合病院に行き、たくさんの検査を受けましたが、全く何の異常も見つからず「気持ちの問題でしょう」
ということになりました。

20歳の時にも、ひどいめまいで悩み、脳波測定の検査までしましたが、やはり何の異常も見つかりません。

めまいがひどすぎて学校に行けない…

それでも、何の異常もなく、気持ちの問題ならば、がんばって行くしかありませんよね。

幸い1週間くらいずっと横になっていると、そこそこ回復して普通の生活ができたので、私は23年間
「あーしんどい。体重い…疲れたらめまいがするのは普通のことだから仕方ない」
と自分に鞭を打ち、だましだまし生きていました。

だましだまし学校に通い、だましだまし仕事し、だましだまし出産・子育てをし…

毎日体調が悪いので、鍼灸治療や漢方薬、それから頭痛薬に、ずっとお世話になっていました。
しばらく続けると元気になるのに、やめるとすぐにまた体調が落ちる。
この繰り返しで、
「一体私の不調は何なの?」
と思いながら生きていました。


そして34歳の時に、ある日突然、めまいが毎日起こるようになり、それでも無理して仕事をしていたら、
「横になっていても、めまいが止まっている時間が1秒もない」
という状態になります。
一時は自力で立つことも歩くこともできませんでした。


「原因がわからない」「これまで漢方でなんとか生きてきた」という2点で、
脳外科医 兼 漢方専門医 のドクターの紹介を受けます。

漢方外来のドクターが、自力で立てなかった時の私のMRI画像を見て、
「頭頂部に、あるはずの髄液がない。空洞がある」
と気づきました。そして私の症状を見て、
「脳脊髄液減少症ではないか?」
と気づきます。

気づいたドクターからたくさんの質問を受けました。例えば、
「体がだるいと思うことはありますか?」
「毎日朝起きて1時間はすごい元気なのに、その後からずっとだるいです」
「え……いつからですか?」
「んー、11歳のめまいが始まった頃からですね。それまでは元気でした」

このようなやり取りや、たくさんの検査を受けて、とうとう「脳脊髄液減少症」という病名にたどり着きました。

病名にたどり着けたことで、治療ができるようになったので、本当に幸運だったと思います。


病名にたどりついても始めのうちは、24時間めまいがしていました。
本や液晶を見ると、ますますめまいがひどくなるので、何も見られません。
思考力もとても落ちていて、眠っているかボーっと何か聞いているか、の日々でした。

治療の甲斐あって、現在は朝起きて1時間半は全く何の症状もなく、とても元気に過ごせるようになりました。(2021年8月現在、2時間は平気になりました)

ブラッドパッチや定期的な点滴のおかげで、元気な1時間半は未だかつて感じたことがないくらい元気です。
それだけ、23年間は無理をして生きていたのだな、と感じます。

元気な間は自転車にも乗れるし、やろうと思えばロッククライミングもできそうです。

1時間半過ぎると、頭痛・疲労感(というより虚脱感)・めまい・手の震え・握力の低下、といった症状が出てきます。
それでも横になれず、連続で3時間半、座っているか立っていると、最終的に自力で立てなくなります。
(気圧やコンディションで時間が変わります)


立てないところまで進んでしまうと、その後2日ほどは、どれだけ寝ていても、まともに動けるようになりません。
そのため、基本的にいつも横になっていて、ご飯を作る、洗濯を干す、病院に行く、というどうしても立ってしなければならないこと以外は、横になってやっています。



この病気は、一般的には頭痛のする病気ですが、私のメインの症状はめまいです。
10代20代の頃は毎日、頭が痛かったですが、その後はブラッドパッチを受けて、本格的に改善傾向に差し掛かるまで、頭痛はありませんでした。

ブラッドパッチを行ってくれた、専門医の先生も
「めまいだけの人は聞いたことがないが否定もできない」
と言っていました。

ところが、硬膜内に造影剤を入れて、髄液の漏れを見る特殊な検査をすると、素人目にもどこから漏れているかわかるほど、たっぷり漏れていました。

髄液が漏れていない人は、造影剤を入れてから24時間後に、30%以上造影剤が残っているそうですが、私の残存率は12.9%でした。


何が言いたかったのかというと、現在私と同じような症状に悩むも
「頭痛がないなら違う」
と否定されている方でも、脳脊髄液減少症のケースもあり得るということです。

まだまだわからないことも多く、認知度も低い、脳脊髄液減少症です。


※こちらでの症状は、2021年8月現在の症状です。
その後、治療の甲斐あって、少しずつ改善し続けています。


 病気を公表している理由

 症状の改善に効果があったこと